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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第7章 記者

金髪の男は「かわしやがった」と呟く。

ニット帽の男は、「ほお、少しはやるみたいやな」と首を左右に曲げて、コキコキと音を鳴らす。

なんとなく危険を感じた良夫は、夕子が捕まっていることを、まったく見ていないフリをして、「いや、なんにもやりませんから」と後ろに下がろうとした。

「だったら、お前も一緒に沈むか?」とニット帽の男は、良夫を掴みにかかる。

良夫は、後退りしようとするが、足が動かなかった。それもそのはず、右足のスニーカーの紐がほどけ、その紐の先を左足で踏んでいた。それに気が付かない良夫は、フンと息を吐いて、右足を引いた。

後退出来るつもりで下がろうとした結果、バランスを崩し、後ろに仰け反るかたちとなった。その反動で右足が上がり、近付いてきたニット帽の男の股間につま先が勢いよくヒットした。

「グフッ!」と言う声とともに、股間を押さえてうずくまるニット帽の男。

良夫は、「わわわわ」と腕を振り、左足でなんとか踏ん張って倒れることを免れた。

だが、先ほど手ではらったはずのハエが、再び良夫の、顔のお面にまとわりつく。なぜなら、捨てたゴミ袋の中にあった生ゴミの臭いが、付着していたからだ。

そのハエが、お面の鼻の部分から入り込んだ。

「うわ、アカンて!」

動き回る良夫は、地面に出来たほんの1センチほどの段差に蹴躓き、真横に倒れてしまう。

この時、左肘の角が、股間を押さえてうずくまるニット帽の男の首元に、全身の重みを加えて落ちていった。

『ゴツ』と鈍い音とともに、ニット帽の男は地面に沈んだ。

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