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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第11章 記者誘拐事件

女性は、白いマスクを下におろす。

その顔は、良夫の叔母である黄木樹鈴(おうきぎ すず)だった。

「えっ! 田中さんのおばさん。え、ここで働いてるの?」と夕子は驚く。

「一昨日うちに来て、次のパート先がここに決まったって言うてきてな。せっかくやから行ったろうて思ったんや」

「それで、いつもは場外馬券売り場で買ってるのを、わざわざここまで来てたんですね」

「まあな、おばさんやけど、うちの母ちゃんみたいなもんや」

「へぇ~、そうなんですね。さっそく次の休みに顔を見せにくるなんて、いいとこあるじゃないですか」

「ちゃんと働いているのか、監視してんのや」と良夫は笑った。

夕子は一度箸を置いて、ボイスレコーダーを出した。

「田中さん、この前、女性と顔に布を巻いた人と一緒に、河原組の所有するビルから出てきたそうですが……なにかあったんですか?」

「河原組?」

それは、二郎と二人で、成り行きで組長の田原と揉めたときのことだ。

なにがあったか、内部のことにまったく首を突っ込んでいない良夫は、その件に関して言えることなんてなにもない。

そして、何故二郎が白い布を顔に巻いて出てきたのか、いまわかった。

ネットニュースの記者に、顔がバレないようにするためだ。

「うん、なんだろうなぁ。女性……を助けにいったんだ」

適当に言った。

「暴力団にですか? じゃあ、あの白い布の人は?」

「月光仮面だ」

「ん~、そのボケがよくわかりません」
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