お面ウォーカー(大人ノベル版)
第3章 ケータイ地域ニュース速報。
それは、先日のお昼休みのこと。
工場の外にある休暇場で、良夫が財布にある、ありったけの十円玉をかき集めて缶コーヒーを買おうとしていた時……、
「田中くん」と、声をかけられた。
声を聞いて、良夫の小銭を入れる手が止まる。面倒くさそうに顔を向けると、そこには名前も出したくない男がいた。
後輩であり、上司でもある、勝重亮(かつしげりょう)だ。
良夫は鼻をフンと鳴らし、再び小銭を入れる。
勝重は、良夫に近付くと、大きな手提げの紙袋を突き出した。
「ご存じでしょうけど、僕は先日まで新婚旅行のため休暇を頂いてました。ご迷惑をお掛けいたしまして申し訳ありません」
「別に」
良夫は素っ気なく返すと、自動販売機のボタンを押すついでに、背中を向けた。
微糖を押すつもりが、無糖ブラックを押してしまった。
勝重は、その後ろにある丸いテーブルの上に紙袋をのせる。
「お詫びといってはなんですが……これ、お土産です」
良夫は振り返り、そのテーブル上の紙袋に目を向けた。
勝重は、紙袋を良夫の方へ滑らせると、「田中くんが、どういったものを好むのかが、今一つわからなかったもので、現地のお土産らしいものを買ってきました。まあ、飾り物ですが、よかったら受け取ってください」
「木彫りの熊とか、デカい将棋の駒やったらお断り」
「いやいや、そんなんじゃないです。まあ、お守りといいますか、壁にかけていれば、厄除けの効果と幸が来るって言い伝えがあるようなんすよ」
「あっそ……おおきに」
工場の外にある休暇場で、良夫が財布にある、ありったけの十円玉をかき集めて缶コーヒーを買おうとしていた時……、
「田中くん」と、声をかけられた。
声を聞いて、良夫の小銭を入れる手が止まる。面倒くさそうに顔を向けると、そこには名前も出したくない男がいた。
後輩であり、上司でもある、勝重亮(かつしげりょう)だ。
良夫は鼻をフンと鳴らし、再び小銭を入れる。
勝重は、良夫に近付くと、大きな手提げの紙袋を突き出した。
「ご存じでしょうけど、僕は先日まで新婚旅行のため休暇を頂いてました。ご迷惑をお掛けいたしまして申し訳ありません」
「別に」
良夫は素っ気なく返すと、自動販売機のボタンを押すついでに、背中を向けた。
微糖を押すつもりが、無糖ブラックを押してしまった。
勝重は、その後ろにある丸いテーブルの上に紙袋をのせる。
「お詫びといってはなんですが……これ、お土産です」
良夫は振り返り、そのテーブル上の紙袋に目を向けた。
勝重は、紙袋を良夫の方へ滑らせると、「田中くんが、どういったものを好むのかが、今一つわからなかったもので、現地のお土産らしいものを買ってきました。まあ、飾り物ですが、よかったら受け取ってください」
「木彫りの熊とか、デカい将棋の駒やったらお断り」
「いやいや、そんなんじゃないです。まあ、お守りといいますか、壁にかけていれば、厄除けの効果と幸が来るって言い伝えがあるようなんすよ」
「あっそ……おおきに」