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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第3章 ケータイ地域ニュース速報。

「田中さんは加害者向きやないなぁ、どっちかっつぅたら被害者やろ~」

「俺の財布なんか盗んだら、スリの方がかわいそうやわ。誰ぞに見付かるかもしれへん危険をおかしてまで盗んだ財布がスッカラカンやったぁ~、言うてな」

良夫は、ポイントカードとレシートがパンパンに詰まった二つ折りの財布を出して、それを叩きながら笑った。

長谷川は、良夫の財布を指差して、

「入ってるレシートの支払額の方が、手持ちの金額より多いんちゃうかぁ~」

ロッカールームが、笑いに包まれた。ただ、良夫は苦笑いだ。

「来年の確定申告のために、レシート無くさんように、ここに入れてんや」と返した。

すると、ロッカールームの扉が開く音がした。入ってきたのは、来年、定年を迎える男性社員だ。

一人一人が挨拶を交わすと、良夫の隣にやってきた。その男性のロッカーは、良夫の真横にある。

良夫が顔を見て、「おはようっす」と声をかけると、男性は、

「おはようさん、おう、会社の前の自販機のところに、こんなんあったわ」と自身が着ている防寒着の下から、あるモノを出した。

良夫はそれを見て、目が点になった。

男性が出したのは、良夫が数分前にその場所に置いてきた、呪われているかもしれない、あのお面だった。

男性は「これ、どこのお面やろなぁ、飾り物にええで」と言う。

すかさず良夫は、

「あぁ、これ、そうとういいですよ。持って帰って、家に飾りはったらよろしいやないですか」と超笑顔で、男性にすすめる。


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