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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第10章 山田二郎

一緒に連れて出た女性こそ、二郎の彼女である本間海奈だった。髪は肩まであり、上下赤いジャージ姿で、少しやつれていた。

東京で二郎の元から離れた海奈は、父親が残した借金返済のため、大阪の河原組の事務所に住み込むかたちで河原組が経営する風俗店で働くことを決意した。

そのため、店にいない時は、事務所で清掃等の雑用を強いられていた。

三人は車に乗り込む。

良夫は後部座席に座り、プラモデルの箱をしっかりと抱き締めた。

「はぁぁぁ、生きて君たちに再会出来たことに心から感激」相手はプラモデルだ。

二郎の隣で、俯いたまま泣き崩れる海奈。

二郎は車のエンジンをかけ、暖房を入れる。

「海奈、これで借金返済の必要はなくなった。これで、やつらに関わる理由もない。あとは、お前次第だ」

「……」

「薬からの呪縛からは、解き放たれたのか?」

その質問に対し、海奈は膝の上に置いた拳に力を込めるだけだった。

「……そうか」

二郎は、一旦車から降りて、駐車料金を払うと再び運転席に乗り、車を走らせた。

鏡越しに、後部座席を見ると、お面を外し、素顔でプラモデルの箱に頬ずりする姿の良夫がいた。

「田中さんすいません、付き合ってもらった上に、大変な思いさせちゃって」

「いやいや、もう二つばかり、来月に出る新作買ってくれたら水に流しますよ」

二郎は、安い報酬だな……と安堵した。

車は駐車場を出て、車道に出た。

ハンドルを握り、季節大はずれの小雪が舞う道を走りながら、二郎は、

「田中さん、もう一カ所、数分だけ寄っていいですか?」

「機械黄門ルノ・ギラーボの戦闘ロボのフィギュアを……」

「田中さん世代のアニメですね」

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