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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第11章 記者誘拐事件

時は6月中旬。
毎年、気象庁から梅雨入りを発表される時期ではあるが、なぜか雨ではなく小雪がチラつく異常気象。
気温も、一桁のまま上がることはなかった。

しかも、それがほぼ近畿圏内で起こっているのも、奇妙な話だ。

そんなことは、関係ないとばかり、日曜日の休日を過ごす良夫は、とある競馬場に、鼻息白く現れた。

たまには、生で競馬を楽しもうと、良夫はわざわざその場所に足を運び、観覧席で缶コーヒーを飲みながら競馬新聞片手にレース予想に没頭していた。

超季節はずれの寒さの中、場内での生観戦の客は少ないが、邪念による熱気だけはムンムンとしている。

第1レースは三連単を狙ったが、残念ながら大ハズレ。

良夫が次に狙うのは、午前中の第2レースだ。

決めるに決められないのか、良夫は馬券売り場まで移動する。

売り場の前に、数人の馬番予想屋が並んでおり、客はレースの出走馬とジョッキーの相性や馬同士の駆け引きなど、レースに合った予想屋の前に集まる。

「くそ、いつもの予想屋がおらんやないか。当たらん大穴予想するやつか、一攫千金とか言うて、当たるのは低いのばかりで、しかも確率も低いし……」

「私は7と2の連番が堅いと思いますよ」

自分に話しかけてくるような女性の声に、さり気なく振り返ってみる。

「あ……」

そこにいたのは、ネットニュースの記者である、鈴木夕子だった。

「あ、あんた……名前なんだっけ」

「夕子です。わかりやすい名前なんだから、覚えてくださいよ。まあ、タコって呼ばれるよりマシですけど」

「タコって言うんだ……」

「もういいです」

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