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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第11章 記者誘拐事件

夕子は小さくため息をつくと、今しがた購入した馬券を見せる。

馬券には⑦ー②と記してある。

良夫は、新聞を突き付け、

「マジでか? 7、2って、妥当すぎるだろ」

「だからこそ、です。あえて大きく狙わず、少しずつです」

「いや、俺達競馬ファンは、隠れ注目馬に目をつけるんや。そんな小さな勝負はせぇへんよ」

「2番は昨年の有馬記念に期待されてたんですよ。だけど、無名の7番に押されたんです」

「知ってるよ。てか、むっちゃ自信持ってるやん。当たるか?」

「絶対当たります」

良夫は、夕子と同じ物を5000円分買った。女性に押しをくらうと弱い。


そして、レースが始まる。






「負けたやないかい!!」

「だって、前の馬がずっと邪魔してるから」

「競馬ってそんなもんだろ! なにが絶対当たるだ! ビリから数えて一着二着の7番2番やないかい」

良夫は、ハズレ馬券をパァーっと散らすも、ゴミを出してはいけないと、すかさず拾い集めた。

「はぁ、やってらんね。帰ろ」

良夫は、意気消沈しつつ、トボトボと肩を落としながら歩く。

「え、もう帰るんですか?」

「賭け金パー」

「お昼おごりますよ」

「きみはマリア様の生まれ変わりか」

良夫の転がし方を覚えた夕子は、黒い小さなリュックを肩にかけ、「どこに行きたいですか?」と聞いた。

良夫は得意げに、

「だったら、お昼に相応しい美味いところ教えてやる」と指で、ついてこいと合図を出した。

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