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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第11章 記者誘拐事件

良夫は肘をつき、手にアゴをのせ、空の湯呑みを爪で叩く。

「つまり、取材か。大変やね記者さんも」

「さっきまでは、記事のスクープは一つだったんですが、二つになりました」

「なんで?」

良夫は湯呑みを持って、お茶を入れてこようと立ち上がる。

すると、同時に、

「1876番の番号札をお持ちの方、料理が出来上がりました」

夕子はすかさず、番号札を良夫に渡した。

良夫は湯呑みを持ちながら、素直に受け取りのカウンターに向かった。

すぐに、良夫は戻ってきた。

「おい、さすがにトレイ二つはキツいぞ」

イヒヒ~と、夕子も立ち上がる。


調味料しか置いてなかったテーブルが、賑やかになった。

良夫はビール瓶の口を、夕子の方へ向ける。

「一杯飲む?」

「いやいいです。て言うか、湯呑みに入れようとしないで下さい」

「グラス取りに行きたいけど遠いんだよなぁ」

「はいはい、取ってきてあげます!」

夕子は、グラスを取るついでにセルフの給水器から、冷たい水を入れて持ってきた。

良夫は、一言、

「今日のところは負けを認めてやる」

「勝負だったんですね」

してやったりの表情で、夕子はテーブルにつく。

頼んだのは、豚肉の生姜焼き。夕子は料理に箸をつける。

柔らかいお肉と絡んだ香ばしい生姜の風味に、思わず顔をほころばす。

「ん~、おいし~、なんか懐かしい味ですね」

「だろ。厨房の奥、よう見てみ」と良夫は、グイっと水を飲み調理場の方を指差した。

「え?」

見ると、調理場の奥から、こちらを向いて手を振る女性を見付けた。



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