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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第4章 逃げられねぇ

指名手配犯人が会社内で捕まり、バタバタと警察が入り込んで現場検証。金髪の男には不法侵入の罪が加えられ、長谷川と事務の女性が事情聴取を受けていた。

良夫にとっては、そんなことはどうでもよかった。

お面を手元から離したかった。

こいつは危険だ……。

今日は、残業するほど仕事はなく、定時の6時で終わった。

なにもかもが終わったロッカールームに戻ると、隣のロッカーを使う、定年間近の男性社員がいた。

「お疲れさまです」と良夫は、声をかける。

男性は「なんか、ここにわしの上着がかけられとるんやけど」とロッカーの扉にかかった自分の上着を示した。

「あぁ、それ、間違って僕のロッカーに入ってたんで、そこにかけておいたんすよ」

「あっ、そうなんか。それはすまなかったぁ」と男性は頭を下げる。

良夫は、しめたと思い、お面を差し出した。

「これも一緒に入ってましたよ。持って帰りはるんでしょ」

男性はそれを見て、

「いやぁ、もうそれはいらねぇわ。どこの誰が捨てたかわからんしなぁ」と苦笑い。

良夫はさらに、

「でも、これ顔につけてみたら似合うんちゃいまっか?」とやや、悪意を滲ませながら言った。

「そうか?」

男性は、大阪のノリでお面を受け取って、顔にはめてみた。

良夫は心で、ニヤリと笑う。

男性はロッカーの鏡を見て、

「おお、わしの素顔と変わらんがなぁ~」と笑って、お面をはずした。

「あれ?」

良夫はキョトンとした表情で、お面を見る。

男性は、お面を差し出し、

「わし、いらんし、会社の焼却炉にでも捨てといて」

「あれ? 顔は、どうにもなってないですか?」

「なんかついてるか?」

「いえ……」

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