テキストサイズ

お面ウォーカー(大人ノベル版)

第4章 逃げられねぇ

良夫は、お面を受け取って、何度も頭を捻る。

おかしいなと思いつつ、お面を顔に当てようとするが、さすがに躊躇いがでる。

だが、いいことを聞いた。

焼却炉。たしかに、そう言った。

そう、焼いて処分すればいい。

聞くまで、すっかり焼却炉の存在を忘れていた。

焼却炉は、工場の裏にある。

さっそく着替えて、「じゃあ、焼却炉に捨ててきますわ」とロッカールームを出る。もちろん、お面も忘れずにしっかりと持ち出していた。

もう、こんな迷惑なお面は必要ない。今日は朝から何度、顔にへばりついたことか……。

呪いだの祟りだの災いだの、そんなもの燃やしてしまえばなんてことはない。

ついでに、勝重に対しての鬱憤も晴らせる。

良夫は、工場の裏についた。そこには、いつ処分するのかわからない、錆びて使わなくなった器具や古いプラスチックの箱、薬液の入ってた瓶等が、無造作に集められあている。

そして、焼却炉の前に立った。

だが、良夫は、そこにあった張り紙に軽いショックを受けた。

“使用不可”

「えっ、なんで?」

鉄の扉の取っ手には、使えないように太い針金が巻かれていた。

「嘘だろ、なんで……」

トボトボと肩を落として、引き返す。

すると……、

「田中さんよぅ」

二階の窓から、定年間近の男性が顔を出して、良夫に声をかける。おそらく風呂に入っているのだろう。

「あの、言い忘れてたけど、2年前から、裏のマンションに煙がくるって苦情が出てて、焼却炉が使えないんだわ」

「早く言ってください」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ