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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第5章 その顔で歩く

あれから数日がたち、良夫はお面に悩まされることもなく土曜日を迎えた。

気温は相変わらずの寒さが続き、とても4月とは思えない。

しかも、この寒さは、気象庁によると、近畿の兵庫、大阪、和歌山と、四国の徳島と香川の一部のみに寒波が止まっているという。

それ以外に、変わった点がいくつかあった。


部屋にはなにもないのだ。

こたつも、テレビも、敷きっぱなしの布団さえない。

(なんで!?)

しかも、良夫は裸である。唯一、身に付けているのは、白いパンツのみだった。

「嘘だろ!」

突然の光景に、思わず玄関近くまで後ずさりする。

あまりの寒さにうずくまり、体を必死にさするが、それだけでは温もることはない。

すると、後ろから……、

『カチャ』

扉が開いた。後ろを見ると、見知らぬ若い男とサンタが、こちらを向いて立っていた。

「ん? なんだお前ら?」と良夫。

「昭玄さん!? なんでこんな所にっ…」と男性が驚いた表情で言った。

「は? 俺は田中良夫やぞ。なんなんだ、あんたら。勝手に人んち入ってきて、ドラクエじゃあるまいし」と突っ込んではみたが、良夫はドラクエで遊んだことがない。

しかも、男は自分のことを昭玄と呼んでいる。どういう事かと考えてはみたが、寒さで頭が回らない。

ここは、天の助けと思い込み、良夫はこう言った。

「なあ、あんたら服持ってないか? 朝起きたらなぜか着るものもこたつも布団も全部なくなっててさ」


良夫はブルブルと体を震わせるながら、そう頼んでみた。
 

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