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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第6章 ヒーローがいるなら、これもいる。

日曜日の朝。

寝返りをうつ際、うっかり床に置いていたお面に顔を突っ込み、パニック状態になった良夫は、ヤケクソで窓から雄叫びを上げ、裏の駐車場に来た車上荒らしを追い払っていた。

そんな良夫が住む、アパートの1階。

ガラクタが山積みになった部屋で、二人の男性が向かい合っていた。一人は、「漠間五衛門(ばくまごえもん)」。今年、80歳を迎える高齢者だ。

腰まで伸びた後頭部の白髪に、てっぺんは床ワックスをひいたような光る頭皮。

サンタクロースのような口髭は黄色く変色し、ヒザまである白衣は所々、機械油で汚れている。足元には、5本の指の分、全部穴の空いた靴下が、その生活を覗かせる。

「いよいよ完成ですね。漠間博士」と言うのは、今年50歳をむかえる、上下赤白のボーダーウェアの助手の三島くんだ。

彼らの目の前には、剣道の武具を身にまとった、180センチほどの人型のロボットが、いまにも動きだしそうな佇まいを醸し出していた。

「うむ、あと一歩じゃ。これが完成すれば、わしはあのノーベル賞に手が届くかもしれん」

「それは、期待できますよ……と、言いますか、これはなんですか?」

助手なのに、知らなかった。

「うむ……言ってなかったな。これは、実戦練習用剣道マシーン。その名も、コテ・メンドウジャだ。細かい動きが出来るように、腕の関節部分がしなやかに可動する仕組みになっておる。これを世に売り出そうではないか」と髭を指でまさぐりながら、漠間は言った。 

三島くんは、難しい表情を浮かべ、「これ、売るんですよね? 一体、いくらで販売するのですか?」と聞いた。

「600万でどうだ」

「高くないですか? 全部ゴミを拾ってきて材料費はタダですよ」

「三島くん、600万でも安い方だ。一体売れたら、また作れるではないか」


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