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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第7章 記者

「おい、面白い記事が出てるぞ」

朝、会社のロッカールームで、長谷川が携帯電話を持って、良夫に近寄る。

長谷川が見せたいのは、ケータイニュース速報で昨日の午後に掲載された記事だ。

良夫は興味がないらしく、

「また、なんの話?」としらけた顔で覗きこむ。

その画面に映し出された写真を見て、良夫は思わず吹き出した。

「おいおい汚えなぁ、ツバ飛ばすなよ」と長谷川はティッシュを取って、画面を拭きたおす。

「なに、なんなん、さっきの写真」

良夫はそれ以上、言葉が出ない。

ケータイニュース速報に掲載された写真は、お面をつけた良夫が、竹刀を持ったロボット、コテ・メンドウジャと向き合っている写真だった。

長谷川が簡単に、説明する。

「なんか、街中を走り回った剣道の防具をつけたロボットを、食い止めた、お面をつけた謎のヒーロー……みたいなこと書いてるな。最後には、ロボットが持つ竹刀を奪って叩きのめしたんだと……演出じゃねぇの?」

そう言って、長谷川は笑う。

思い起こせば、つい先日。良夫には、心当たりが思いっきりありすぎた。

これが自分だとバレたら、間違いなく笑い者だ。

ここは、知らないフリをしようと、適当に誤魔化す。

「ふ~ん、こんなんと闘うなんざ、格闘技をやってる強靱な肉体の持ち主なんだろうな」

「てか、田中さんが着ているのとよう似てるけどなぁ」

似ているのではなく、まったく同じものだ。

「たまたまだろ。ジーパンに黒いダウンジャケットなんてよく見るだろ」

「後ろ姿なんて、もろ田中さんやで」

誤魔化すことがこれほど苦しいものなのかと、良夫は歯を噛み締める。

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