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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第7章 記者

長谷川は記事を読みながら、チラチラと良夫を見る。

「う~ん、これが田中さんやったら、まあ、向かい合うことなく逃げてるやろうな」

それを聞いて、良夫は思う。

(いや、あの写真はロボットに向かって、ごめんして言うてる時の写真や。逃げてんだよ)

良夫は、気分がすぐれないのか、

「トイレ行ってくる」と扉を開けた。

「なんや、腹減ったんか?」

「俺になにを食わすつもりやねん」

別にトイレには行きたくはなかったが、良夫は、正直にトイレに入った。

出すつもりもなかったが、小便器の前に立ち、己のポロンを出す。

数滴出た。

「そこにいるのは、田中くんかい?」と大便器の個室から声がした。

その声の主が、誰かわかった。

「勝重か?」

「おいおい、もう僕は課長なんだよ。さん付けか、課長って呼んでもらわないと」

「はいはい、課長課長課長! てか、なんでチョビリの音で俺だとわかった!?」

「まあ、そんなことより、なにかいいことあったのかい?」

「チョビリ音が鼻歌に聞こえたんかい。てか、いいことなんてあるかいな」と言いながら、良夫は、ポロンをしまう。

「なんだ、あのお面のおかげで君の好きな競馬で儲けてるのかと」

競馬には昨日、当たったばかりだ。

だが、これがお面のおかげだとは思いたくはなかった。

「あのお面のせいで、災いばっか起きてるよ」

「ちょっと待ってよ、あれ幸運を呼ぶんだよ。そう、聞いっ……くっ……」

「リアルにきばりながら喋るな!」

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