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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第7章 記者

「はぁ?」

良夫は、それを見て否定は出来なかった。どう見ても自分であり、自分以外にこのお面をつけてる者はいないと確信しているからだ。

「いや、まあ、これは、僕……てか、こんなんいつ撮った?」

写真には、もう一人、コートを着ている男の後ろ姿が映されている。

おそらく、逮捕されたショーゲン・パル・プンテだろう。

夕子は、スマホをバッグに入れると、

「これ、 お面男、変質者を捕まえるって記事でケータイ地域ニュース速報で載りましたよ」と言って、真っ直ぐ良夫を見据える。

「え、あれも載ったの? てか、あんた何者?」

「だから、私はケータイ地域ニュース速報の記者だって。私からしたら、あなたこそ何者って聞きたいです」

そう言っている夕子の右手には、黒い塊が見える。これは、ボイスレコーダーだ。

良夫は、小さな小銭入れから五百円玉を一枚出し、自動販売機の投入口に入れると、缶コーヒーを一本買った。

「はい、次、好きなの押していいよ」と良夫は、ドリンクをご馳走しようと自動販売機の前を譲るが、退いた瞬間に小銭が音をたてて落ちてきた。

「うわわわわ、失礼失礼、あの奢るから、温かいもの飲みな」と慌てて、返却口から小銭を取り出す。

夕子は、「ありがとうございます。でもおかまいなく」と自動精算システムのパネルに、左手の親指のつけ根を近付ける。

『ピッ』と音がして、ドリンクのボタンが点灯。夕子はホットのブラックコーヒーを買った。

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