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蜃気楼の女

第23章 櫻子VS尚子

「平八さんの心を使ってのし上がるのよ、櫻子!」
 そう言ってから訂正した。
「あっ、ごめんなさい。間違えました。これからは平八さんの助けでやっていきます……」
 そう言った櫻子は、寝ている平八郎の顔を見て、照れくさそうに笑った。突然、櫻子の頭をなでられた。驚いて、後ろを振り向くと、存在を忘れていた平八型ドールが立っていた。
「櫻子さん、そういう素直さは大切です。間違ったら、正す。間違ってもいいのです。でも、間違ったままではいけません。さあ、教室に行きましょう。私たちの未来の舞台は教室に有りです」
 平八郎はそう言いながら、日本教育改造を踏み出した瞬間を実感した。そして、櫻子にとっては、日本国乗っ取り計画の第1歩になる。
「平八さん、悪いけど、アラビアーナ国の民のため、踏み台になってね…… ごめんなさい…… 潔くあたしに利用されてね」
 櫻子は教室に向かって前を歩く平八郎型アンドロイドの背中に謝った。

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