
蜃気楼の女
第23章 櫻子VS尚子
*
月曜日、学校の1週間が始まる日というのに。櫻子はベッドに寝ている平八郎に付き添っていた。櫻子の目論む学園乗っ取り計画(将来、日本乗っ取り計画に名称変更予定)はまさに頓挫した。櫻子はいらだった。いらだつ原因は平八郎が寝たきりと言うことにつきる。自分では何もできない無力さをかみしめる。アラビアーナ国の使命であり、祈願である日本乗っ取り計画を、櫻子は完全に忘れた。初心忘れるべからず、の初心は平八郎を愛することで、消し飛んでいた。
「平八さん、病気どうなの? 大丈夫?」
櫻子が平八郎の股間にほおを置きながら、平八郎の顔に向けて問い掛けた。彼の股間は櫻子の献身的な愛撫に何の反応を示さない。ウイーン ウィーン 静かだった部屋に突然、異音が鳴り響いた。部屋の片隅にあるアンドロイドの箱が音を立て出した。
「稼働します。パターン1実行します」
箱から音声が流れた。そして、箱から平八郎型アンドロイドが出てきた。
「さあ、櫻子さん、いざ、出陣ですぞ! 日本の未来は君に掛かっている! さあ、立ち上がるときです!」
その声に驚いた櫻子は、平八郎の股間に乗せていた顔を上げて言った。櫻子は平八郎が戻った、と思った。
「平八さん、おかえりなさい!」
櫻子は心の底から喜んだ。また、この人と一緒に行動できる。二人で未来を築いていく。しかし、平八郎本体を見ると、酸素マスクを顔に付けて、目をつむった状態だ。その顔は醜い野獣としか見えない。顔の中心にある鼻が大きく、伝説の天狗というほど高くはない鼻が目を引く。一般的な鼻とは乖離した鼻だ。櫻子はその変形した鼻に顔を近づけると、一番高い部分に唇を軽く当てた。これも平八さんなんだね、とつぶやいた。この人は、これからもドールなしでは生きられない。心は本体に有り、行動はドールにある。それでも平八郎と一緒にいて楽しければいいではないか、櫻子の気持ちは前向きだった。虐げられた民として育ってきた櫻子は、平八郎と同じ空間を生きる、今の状況は櫻子には希望で満ちあふれていた。
月曜日、学校の1週間が始まる日というのに。櫻子はベッドに寝ている平八郎に付き添っていた。櫻子の目論む学園乗っ取り計画(将来、日本乗っ取り計画に名称変更予定)はまさに頓挫した。櫻子はいらだった。いらだつ原因は平八郎が寝たきりと言うことにつきる。自分では何もできない無力さをかみしめる。アラビアーナ国の使命であり、祈願である日本乗っ取り計画を、櫻子は完全に忘れた。初心忘れるべからず、の初心は平八郎を愛することで、消し飛んでいた。
「平八さん、病気どうなの? 大丈夫?」
櫻子が平八郎の股間にほおを置きながら、平八郎の顔に向けて問い掛けた。彼の股間は櫻子の献身的な愛撫に何の反応を示さない。ウイーン ウィーン 静かだった部屋に突然、異音が鳴り響いた。部屋の片隅にあるアンドロイドの箱が音を立て出した。
「稼働します。パターン1実行します」
箱から音声が流れた。そして、箱から平八郎型アンドロイドが出てきた。
「さあ、櫻子さん、いざ、出陣ですぞ! 日本の未来は君に掛かっている! さあ、立ち上がるときです!」
その声に驚いた櫻子は、平八郎の股間に乗せていた顔を上げて言った。櫻子は平八郎が戻った、と思った。
「平八さん、おかえりなさい!」
櫻子は心の底から喜んだ。また、この人と一緒に行動できる。二人で未来を築いていく。しかし、平八郎本体を見ると、酸素マスクを顔に付けて、目をつむった状態だ。その顔は醜い野獣としか見えない。顔の中心にある鼻が大きく、伝説の天狗というほど高くはない鼻が目を引く。一般的な鼻とは乖離した鼻だ。櫻子はその変形した鼻に顔を近づけると、一番高い部分に唇を軽く当てた。これも平八さんなんだね、とつぶやいた。この人は、これからもドールなしでは生きられない。心は本体に有り、行動はドールにある。それでも平八郎と一緒にいて楽しければいいではないか、櫻子の気持ちは前向きだった。虐げられた民として育ってきた櫻子は、平八郎と同じ空間を生きる、今の状況は櫻子には希望で満ちあふれていた。
