
蜃気楼の女
第25章 1週間前
「はい、では、橋本さん、あたしに付いてきていただけますか?」
少女は橋本の右手を握って来た。橋本はびっくりした。この子は会ったばかりの男を直ぐ信用するのか、と不信に思った。
「おじさん、あたし、他の人と同じで知らない人は警戒します。でも、さっきも申し上げましたけど、おじさんのこと、すごく知っています。首の後ろにほくろがあることも知ってます。これからあたしのうちに来てください」
橋本はさらに驚いた。俺の首の後ろにほくろがあったんだ、と驚いた。そんなつまらない俺の情報まで熟知している。どこでそんな情報を得たんだ。そんなつまらない情報まで記憶している。そんなに調べ上げて、俺をどうするつもりだ。橋本は心の片隅で、この美少女が持つ未知の才能の恐ろしさに警告を発していた。この子には正体の知れないオーラを感じる。長年数多くの著名人の取材を重ねてきた橋本の経験が発する本能の警告だった。恐怖で身震いが起きていた。しかし、虎穴に入らずば虎児を得ず。この子の言いなりになるしかない。田所の悪を公表するためだ。素性の知れない少女だが、まずは信じよう。橋本は、少女とともに、清瀬駅で東武電車に乗った。少女と席を隣り合って座った。周囲の人間が橋本と少女をチラチラ見ているのが分かる。不細工なおじさんと美少女。違和感があるのだろう。橋本も気が引けてきた。ひょっとすると性犯罪者にされるのではないか、という不安がわいてきた。この少女はいきなり大声を上げ、叫ぶ。おじさんに無理やり連れ回されています。助けてください。必死に叫ぶ少女に、周囲が駆け寄ってくる。俺は居合わせた乗客に手足を取り押さえられて、警察に引き出される。社会的な抹殺だ。田所なら考えそうな筋書きだ。俺を葬るための策略が始まった。まんまと引っかかった。人生、終わった。橋本は体をくっつけて隣に座る美少女を見て笑った。
少女は橋本の右手を握って来た。橋本はびっくりした。この子は会ったばかりの男を直ぐ信用するのか、と不信に思った。
「おじさん、あたし、他の人と同じで知らない人は警戒します。でも、さっきも申し上げましたけど、おじさんのこと、すごく知っています。首の後ろにほくろがあることも知ってます。これからあたしのうちに来てください」
橋本はさらに驚いた。俺の首の後ろにほくろがあったんだ、と驚いた。そんなつまらない俺の情報まで熟知している。どこでそんな情報を得たんだ。そんなつまらない情報まで記憶している。そんなに調べ上げて、俺をどうするつもりだ。橋本は心の片隅で、この美少女が持つ未知の才能の恐ろしさに警告を発していた。この子には正体の知れないオーラを感じる。長年数多くの著名人の取材を重ねてきた橋本の経験が発する本能の警告だった。恐怖で身震いが起きていた。しかし、虎穴に入らずば虎児を得ず。この子の言いなりになるしかない。田所の悪を公表するためだ。素性の知れない少女だが、まずは信じよう。橋本は、少女とともに、清瀬駅で東武電車に乗った。少女と席を隣り合って座った。周囲の人間が橋本と少女をチラチラ見ているのが分かる。不細工なおじさんと美少女。違和感があるのだろう。橋本も気が引けてきた。ひょっとすると性犯罪者にされるのではないか、という不安がわいてきた。この少女はいきなり大声を上げ、叫ぶ。おじさんに無理やり連れ回されています。助けてください。必死に叫ぶ少女に、周囲が駆け寄ってくる。俺は居合わせた乗客に手足を取り押さえられて、警察に引き出される。社会的な抹殺だ。田所なら考えそうな筋書きだ。俺を葬るための策略が始まった。まんまと引っかかった。人生、終わった。橋本は体をくっつけて隣に座る美少女を見て笑った。
