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蜃気楼の女

第29章 初めての学園

 尚子が橋本に2度目のカプセルを首に当てがってから20分が経過した。その間、尚子は寝ている橋本の横に並んで寝ていた。尚子はずっと仰向けになって寝ていた橋本を横で見つめながら励ますように言った。
「おじさん、大丈夫よ…… 大丈夫よ……」
 尚子は橋本に大丈夫と言いながら、自分に向けて心を静めていたのだろう。橋本の手を尚子の手がいつの間にか握っていた。橋本に、電車に乗っていた数日前とは違って、尚子の手には安らぎを与えてくれる暖かさが生まれたように感じた。きっと、この子はこれから、どんな人にもこの手の温かさを感じさせることができるのだろう。俺はそう言う子を幸福な未来に導くことのできる教育者にならなければならない。
「田所さん、そういうことでいいんだろ?」
 橋本は橋本の顔を見つめている尚子の手をしっかり握りしめた。

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