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蜃気楼の女

第30章 尚子と橋本の決意

「おじさん…… 学園長のメモリが移植されるまできっと考えがまとまらないと思うわ…… だって、おじさんには考えるための、学園長の思考が移植されていないもの……」
 尚子は寝ている橋本に近づいた。尚子は橋本の顔に近づいてまた顔を見つめた。10秒ほど、橋本の顔を見つめていた尚子は話を始めた。
「おじさん、もう、いいでしょ? おじさん、キスしていいんだよね。あたし、うれしいな……」
「おい…… どういうことだ? もう、キスはしないって、この前、言ってただろ? 」
「だって、それは、この前までのことよ、おじさんが嫌だって言うから止めたのよ。でも、今は、あたしが見つめていたら、キスしたいって、思ってくれているもの」
 そう言った尚子は橋本の唇に唇を重ねてきた。橋本はもう拒まなかった。尚子の柔らかな唇を確かめるように身を委ねた。尚子は橋本の唇をかき分けるように舌を入れた。橋本も尚子の舌に自分の舌を絡めた。しばらくして、尚子が舌を戻して言った。
「おじさん、やっと、友だちになれたね……」
「あぁーー そうだな…… 尚子、好きだよ…… 」
「えっ、おじさん、うれしーー あたしも好きよ、あっ、もう、あたしは今まで何度もおじさんに言っていたわね……」
 尚子は恥ずかしそうに言ってから、小さく笑った。
「ああ、何度でも言ってくれ。きみのような子に、そう言われると、うれしいよ……」
 そう言うと、寝ている橋本は尚子の両腕をつかんで引き寄せた。橋本の胸の上に乗った尚子を強く抱きしめた。尚子は橋本に体を乗せてうつろな目をして眺めた。
「おじさんはまだ、あたしだけのおじさんね……」
「どういう意味だ?」
「だんだんとおじさんは学園長の記憶と意思を受け継ぐわ。学園長は結婚してもいいくらい櫻子様が好きだった。

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