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蜃気楼の女

第30章 尚子と橋本の決意

 鼻歌を口ずさみつつ、橋本の腕の付け根から手のひらまでの間を何度か、人差し指を当てながら、往復させていた。ひとしきりその往復を繰り返していたが、満足したのか、尚子は、ベッドからはい出ると、田所の寝ているベッドを奥の部屋へ移動させていった。それから、5分ほどして、尚子が戻ってきた。
 橋本は、尚子から聞いた櫻子について、どう対応すべきか悩んでいた。部屋に入ってきた尚子は、橋本の困惑がすぐに分かったようだ。学園の前で橋本に会ってから、尚子は橋本と今までずっと付きっきりでいた。一人になったとき、今までの経緯とこれからの自分の使命に困惑しているに違いない。それを取り除いてやらなければいけない、と瞬時に尚子は思った。そのためには、もやもやを吹きとばすようなことを橋本にしなければいけないと直感し、橋本に言った。

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