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蜃気楼の女

第35章 現代の安田邸

 進一はその広がっていくしずくのたまりを見つめた。
「アーアー これだけで、どんだけ興奮してるのぉ? もう、すごく淫乱なんだね、尚ちゃんーー」
「ウウウゥー 進ちゃん、こんなことするなんて、…… こんな……」
「何言っちゃってるのぉ? いつも、こんな、こんなみだらなこと、してほしいから、自分でドールまで用意して、みだらなことしているんでしょ? そう、なんでしょ? さあ、人形、どう使って、どうしてるのかなぁー さあ、早く、立ち上がって、僕に見せなさいぃ!」
 尚子がゆっくりベッドに片手を掛けて立ち上がった。
 ピシャッ
 進一は尚子が立ち上がると、盛り上がった丸い尻を片手でたたいた。甲高い音が部屋に響いた。
「痛ぃー」
 尚子は初めて人にたたかれて驚いた。尻がヒリヒリしびれている。
 ピシャッ
「ウゥッ、進ちゃん…… ひ、ひ、ひどいよ……」
 また、同じ尻をたたかれ痛みが重なった。
 進一はどうせたたいても、これは妄想だと思っていた。その証拠に、尚子はたたかれても拒まないし、逃げない。自分が思い描く妄想の世界だという証拠である。
 進一はときどき現実の社会で尚子に対し、妄想してしまう。だから、仕事中、尚子と二人きりになり、尚子に何度か誘惑された時も、尚子の誘いに乗らなかった。妄想か、現実か、分からなくなってしまうからだ。
(この状況は間違いなく僕の妄想だな。絶対そうだよ…… 尚ちゃんが僕の前で裸なんだもの、蜜もこんなに流して。いつも僕の机の上で笑っているだけの尚ちゃんの写真と違うもの……)

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