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蜃気楼の女

第36章 橋本浩一の記憶

 尚子が問い掛けても、橋本の全身を快感の余韻が残っていて、すぐに声が出せなかった。橋本は返事を待っている尚子の顔を見ながら、やっと、かすれた声で、 「ぁああ、すっごく、気持ちよかったよ……」と答えた。
「そうーー 良かったぁー あたしもうれしいぃー」
 尚子は橋本の返事を聞いてにこにこ笑っていた。
(尚子は僕にするだけでいいのかい?)
 橋本はそう聞いてみたかった。さっきの快感を思い出すと、また、心棒が復活してくる気配を感じた。橋本はきよらかな美少女に、自分の局部をなめられた、という体験が信じられなかった。そんな行為はアダルドビデオだけの世界と認識していた。尚子は、自分の放出する精子を口の中で受け入れ、すべてを飲み込んでしまった。橋本には信じられない光景だった。
(この子にはこれが常識なんだろうか?)
 橋本にとって、ショッキングな行為も、尚子には愛するものたちがする当たり前の行為だった。尚子は橋本の心棒を見つめた。
「おじさん、まだ、スカイツリーのままよぉー あたし、もっと、ほしいなぁ……」
 尚子は心棒に顔を近づけて、簡単に口にくわえて、頭を前後に移動させ始めた。また、心棒に快感を感じながら、仰向けになった橋本は、一心不乱に顔を前後に動かす尚子をじっと見守った。愛する人を気持ちよくさせたいという尚子の献身的な愛の性技を見ていると、うれしくて、腰を尚子の顔に押しつけたくなる衝動に駆られたが、腰は動かせなかった。
(こんなに気持ちがいいなんて、考えもしなかったし、ガールフレンドはいてもセックスしたいと今まで思わなかった。ううぅー また、出そうだ)

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