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蜃気楼の女

第36章 橋本浩一の記憶

 橋本は一心不乱に動かすけなげな尚子の頭をなでてやりたくて手のひらを頭に置いた。尚子が動きを止めて口を心棒から外した。尚子の口からよだれが橋本の腹に糸を引いて垂れた。
「おじさん…… どうしたぁ? 出ちゃいそう?」
 そう言ってから、尚子は橋本の顔の前に体をゆっくり移動させてきた。橋本は今にもいってしまいそうだったこともあり、少しだけ息をつけてほっとした。
「この年で、恥ずかしいけど、こういうの初めてなんだ…… その調子で続けられると、また、すぐ、いっちゃいそうなんだ……」
「初めてなの知ってるよ、おじさん、硬派なんでしょ?」
「うーん、硬派とかは関係がないような気もするけど…… 」
「気持ちいいなら良かったわ こういうことするの、あたしも初めてなの…… なんとなく、両親の、見てたりしてたけど…… もう少し、ゆっくり続けるねぇー おじさんに、もっと、あたしと一緒に気持ちよくなってもらいたいから…… あたしももっと気持ちよくなりたいしぃ…… いいでしょ?」
 そう言った尚子はまったく初めてというわりに、全然、橋本の心棒をためらうことなく口の中へくわえた。
 超能力を生まれながらに持っていた尚子は、幼い頃、見なくていいものを、ずっと、見てきた。ある意味、不幸な生い立ちといえた。見させたくないという両親は、隠し部屋という秘密の部屋まで作ったのに、そんな配慮のかいなく、尚子はつぶさに両親の愛の行為の一部始終を見てきた。
 だから、尚子にとってセックスは、愛し合うものの自然な行為として、幼い頃から理解してきた。何でも透視できる超能力を持ったがゆえに、目にするものすべてが知識となり、未来への教養、想像力、活動力になった。尚子はすべての愛を常に吸収しているのだろう。だから、体から後光を放っている。
「あたし、おじさんが好きなのよ、おじさんはあたしのことをどう思う?」
「ああ、もちろん、尚子が好きだよ」
「良かったぁ- やっと尚子って呼んでくれた。ずっとあたしのこと…… 愛してくれるよねぇ もちろん、あたしもおじさんを愛するよぉー」

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