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蜃気楼の女

第38章 邪心による支配

 田所は、学園の寮だった敷地に近代工場を建設した。アダルトドールを大量生産した。製造には実習と称して、学園の生徒をどんどん募集し、製造学科を新設し、女子生徒を組み立て実習生として当てた。人件費はゼロ。授業中に完成したドールを使った愛の授受相互訓練として、女子生徒にドールを使わせて、性の喜びを教える性教育を平行して開始した。すべての女子生徒は快楽に溺れていった。
 このようにして、すべてが、邪心にむしばまれた田所のたくらみによって、無謀で卑劣な邪心にまみれた教育が推し進められていく。

  *

 邪心化した田所に葬り去られた橋本は、まだ、闇の中にいた。ときどき、田所の邪心が橋本の本体を通し、行動が届く。
「ごめん、心配を掛けたね、でも、これからは大丈夫 んんぅーー」
 田所の声が聞こえる。その声を誰かが遮っている。橋本は闇の中で状況を想像する。田所が櫻子に言った言葉と、言葉の最後が不鮮明になったのは、櫻子にキスをされて口をふさがれたと言う状況が見えてきた。
(くそぉー 田所の思考が伝わってくる。俺は、まだ、完全に葬られてしまったわけではないようだ。だいたい、肉体は俺のだ!)
 橋本は夢の中にいるような今の状態に憤慨した。
「田所、今に見ていろ、おまえの邪心を粉砕してやるからな!」
 橋本は闇の中で叫んだ。橋本は復活を望みながらも、6年という歳月が流れていた。闇の空間では時間という概念がなかった。

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