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蜃気楼の女

第41章 未来に向かって

 土曜日、午後、櫻子と尚子が二人で性女学園の正門前に立っていた。学園の生徒は午前いっぱいで下校し、午後から誰も残っていない時間である。
「櫻子様、おじさんが、正門を閉めて、田所一人であることを確認してから計画を実行しましょうか、って言ってますけどぉー」
 尚子が櫻子に言うと、櫻子はうなずいた。「ねえ、あんたの好きな橋本さんって、ほんとにあんたの体にいるわけ? なんか、うさんくさいのよねぇー 」
「はい、もちろんです。おじさんをいっぱい愛してあげたので、一心同体になれたのです。もう恋人以上の仲とおじさんも言ってくれてます」
「ふーん、あんたたち、そんなに仲がいいんだぁ、なんか…… うらやましイーねぇ あんた、橋本さんにいっぱい愛してもらったってことぉー?」
「うーん それは微妙かなぁー あたしがほとんど愛していたから…… そのくらいおじさんってすてきなのよぉー 櫻子様もおじさんに会えたら、きっと納得すると思いますよぉー」
「そんなにいい男なの? あんた、体だけじゃないってことなのね? 尚子の好みなんだぁー 橋本さんが復活したら、あたしもしていいかなぁー」
 櫻子はまだ尚子としか愛し合ったことがないのでうらやましい。本来、アラビアーナの女は5人で、一人の男を愛し合う。一人が愛し合っている間、4人の女たちは、お互いに愛し合う。男の愛を仲良く共有しながら、平和に穏やかに、生きてきた民族である。
「尚子を愛してたから、橋本さんを愛したことにならないかしら?」
「うーん、それは今までそういう気持ちにならなかったから…… 無理かなぁーとは思いますけど」
「ねぇ、これが片付いたら、橋本さんと試したいな、いいでしょ?」

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