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蜃気楼の女

第3章 児玉進一

 尚子がその商品を手にして進一に向かって質問した。
「進ちゃん、これ、使いますか? 」
 作業の手を休めて進一は尚子のほうを見た。尚子がオナホールを箱から出して見えるように差し出した。
「なんでそんなこと僕に聞くのさ…… 」
「あららー だって、寂しそうだもの進ちゃん…… あたしが慰めてあげるから、これ使わないようにね」
「尚ちゃんさ、職場で止めてくれる? そういう下ネタ話、何処で誰が聴いているか分からないしさ。まして、変に誤解されて、お父さんの耳に入ったら、僕、大変だからね…… 責任取りなさいってーーー 即、転勤だよ? いやでしょ? 」
「それ、超嫌だナ、進ちゃん、いなくなったら、あたしもう生きがいなくなっちゃうよ。進ちゃんをいじめる生きがいね、でも、もっと嫌なのは進ちゃんのほうでしょ? あたしからいじめられなくなっちゃうものね 進ちゃん、もう、マゾ命が丸出しだもんね! 」
 尚子はそんなことを平気で言てのける。進一は改めて周囲を見回す。誰もいない、ことを確認すると安堵する。
 4年前、尚子は大学試験日の前日に獲得した魔性の力をいつでも自由に使えるようになっていた。儀式後、山野櫻子に使い方を伝授され、好きな進一を、進一に気づかれずに、勤務時間が終了すると、進一をいつも自由に、気ままに弄んで楽しんでいた。その進一は尚子に弄ばれていることを全く知らない。世間体を気にする進一は、尚子が大好きで、いつでも抱きたい衝動に駆られていることを我慢して生きている。その思いを、尚子は知らない。進一は尚子が好きで、大事にしたいから、本当にお互いが好きになってから、セックスしたいと考えていた。

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