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蜃気楼の女

第4章 安田邸

 進一はメグミにキスされたが、唇の感触が生身の人間そのものだった。暖かい。メグミは進一の全身を嘗め回した後、膝を床にゆっくり落とした。屈んだメグミは進一の性器の前に顔を近づけた。腹の前に両手を下ろし、更におろし、性器をふっくら包むと、静かに圧迫していく。両手でリズムを取って円を描くように性器に対し摩擦を施す。ゆっくり、速く、ゆっくり、緩急を付けて、それでいてランダムでもない、アルゴリズムの動き。人間らしい、心の動きを習得する。両手に備えられた性感センサーで性器の形を瞬時に計測し、手の指先、手の平が対象物のサイズ、形状に合ったマッサージ、振動を与えていく。
「うううーーー 何? これ? うっそーーーー 」
 進一はあまりの気持ちよさに我を忘れ、絶叫、雄叫びを上げた。
「アアアアーーーー 」
 メグミは射精寸前に動きを止める。
「アアアー ウソー いっちゃうところだったー 」
 背中をのけぞらしていた進一が力を抜いて息をはいた。メグミは直ぐに続きの動きを開始する。何度でも寸止めを繰り返すことが可能である。究極の奥義、蛇の生殺し性技プログラムの完成形であった。
「尚ちゃん、これはもういけいけ地獄の拷問に近いねえーー いきそうでいけない、この歯がゆさが、苦しくもあり、快感でもある…… 」
「でも、安心して、行きたいという限界の時期をこのドールは、セックスを経験すればするほど、限界値を統計的に導き出してくれるの。あまりにじらされるとその気がなくなるじゃない? AIの強みね」
 尚子はソファーに腰掛けながら、メグミと進一のセックスをじっと固唾をのんで見ていた。
「ねえ? 進ちゃん…… あ、あたし、したくなって来ちゃったー もう、我慢できないわ…… 進ちゃん、しよっか? 射精はあたしの中にして? 」
 尚子が物欲しそうに進一の裸体をねっとりと見つめる。進一は首を左右に大きく振って言った。
「絶対駄目! お父さんにばれたら殺されるかも? 」
「あら、ばれなければよろしくて? 進ちゃんもあたしとしたいのね? 」
 メグミから寸止め性技を何度となく攻撃されていてすっかり尚子に対するいつもの理性が飛んでいた。

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