不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第26章 前夜祭
メイクをしてアンナに浴衣を着せ終わった頃、時間はもう15時を過ぎていた。
「急がないと~!」
私は大急ぎで浴衣を着る。
「2人ともバッチリになったね!気合い入り過ぎかな?(笑)」
「たまにしか出来ないもん、いいのいいの!それよりもうすぐ瀬川くんが来るんでしょう??」
「そうそう」
携帯を確認すると少し前にメッセージが入っていて、その内容は”平野を拾ってから行く”というものだった。
ほぼ16時ぴったりに、「ついたよ」と電話が鳴った。
私たちは不慣れな浴衣と下駄で慎重に階段を降りると、瀬川くんの車に駆け寄った。
「おっ、浴衣じゃん!いいねぇ」
後部座席から平野が微笑み、運転席では瀬川くんが片手を上げて挨拶している。
隣に乗れ、と合図され、私は助手席に乗り込んだ。
後ろではアンナと平野がいつもの調子でキャアキャアと騒いでいる。
「しゅっぱーつ!」
アンナの掛け声で、車は待ち合わせの神社を目指して走り出した。
「今日は何人くらい集まったのー?」
アンナが聞くと、平野は少し数える素振りをしたあとで「えぇっと…15人くらいかな?お店じゃないから予約いらないし、ちゃんと数えてないけどね(笑)」と答えた。
「その人数じゃ、バラバラにはぐれるだろ(笑)」
瀬川くんが笑い、平野も「だよね~?」と笑った。
道中、うしろからは
「浴衣、かわいいじゃん!」
「でしょおっ?ミライが帯も髪の毛もやってくれたんだよ~ん♪」
「俺も浴衣着たいな~」
という会話が聞こえてきた。
「私帯結んであげるから、次の花火大会行ってきなよ~!アンナと(笑)」
私が少しおちょくるように言うと、
「俺…またアンナちゃんの子守?(笑)」
と平野がおどけた。
「ちょっとぉ~?!私と花火大会に行けるなんて、スッゴク光栄なことでしょうがぁ~!」
「自分で言うか(笑)」
楽しい雰囲気のまま、車は神社の近くまでたどり着いた。
最近建ったであろう巨大なホームセンターが臨時で駐車場を貸し出していて、瀬川くんは車を停めると「よし、行くか」とエンジンを切った。