不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第27章 玉砕
やがて花火大会も終盤に近づいた頃、瀬川くんはトイレに立った。
アンナと平野と3人で他愛のない会話をしていると、スッとコウヘイくんが現れた。
「可愛い子、発見!」
と言って私の隣に座ると、「うわ~、出たよ(笑)」と平野が苦笑いをした。
コウヘイくんはお構い無しで私にずいと近寄り、
「ね、ミライちゃん」
と見つめてくる。
「な、…なあに?」
アンナと平野がジッと様子を見守っている。
「俺、マジで脈ない?」
「えぇ?」
「諦めきれないから。俺ミライちゃんのこと。瀬川は関係ない。正直に聞かせてよ」
まだ望みがあると思っていそうな態度に困惑してしまう。
「正直に、って…」
思わずアンナに目配せすると、彼女は”アチャー”という表情で佇んでいた。
コウヘイくんは相変わらず私をじぃっと見つめて返事を待っている。
「私…。私は…、
瀬川くんの事がすごく…大事なの」
途切れ途切れに話す私を見兼ねて、アンナが背中をさすってくれる。
「コウヘイくんの事は…楽しい同級生だと思うけど…。」
「・・・けど?」
「っ…それ以上の…恋愛とかそういう…感情は、ない…」
これで良かったのかと不安になり、平野を見る。
彼は親指を立て、笑った。
「ミライちゃん、よく言った!コウヘイは今まで女の子に振られたことないから、ハッキリ言わないと分かんねぇんだよ(笑)」
「えぇっ?コウヘイくんってそんなにモテるのぉ~!」
アンナも声を上げ、またいつもの調子で2人は盛り上がる。
コウヘイくんは私を見据え、
「……。ん。分かった。今までつきまとってごめんね?もうこれで俺、…ほんとに諦めるわ!!」
と言って空を見上げた。
「あんまり、瀬川の恋路を邪魔しないであげてヨネ~(笑)」
平野がおどけて言うと、すぐ後ろから
「本当だよな」
と低い声がした。
トイレから戻ってきていた瀬川くんはにんまりと歯を見せ、コウヘイくんに近寄り肩をバシバシと叩いた。
「俺、本気なの。分かってくれ。」