不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第28章 お姫様
なにかあったのかとすぐに開く。
[今日、コウヘイにああ言ってくれて嬉しかった。かっこわりいけど実はちょっと心配してた。ありがとな。先に寝てろよ]
直接言えなかった瀬川くんがいじらしく、愛おしい。
[私には瀬川くんしか見えてないよ。気をつけて帰ってね]
あたたかい気持ちのまま私は浴衣を脱ぎ、シャワーを浴びた。
・・・
翌週、誘致イベントがあった日の夜、瀬川くんからの着信で携帯が光る。
「もしもし?お疲れ様」
「あぁ、今帰ってきた。イベント、前回よりも大盛況だったよ。ありがとな」
「ううん。それなら良かった。またなにかあったら声かけてね、なんでもする!」
「ふふっ。…それで、納涼祭の話あっただろ?流しそうめんの」
「うんうん」
「あれ、お前が来るって事でみんな盛り上がってたけど(笑)」
「あははっ、本当に行ってもいいの?楽しみだな」
「8月の終わりだよ。校長が、お前によろしくって」
・・・
結局、それから1ヶ月以上も会えない期間が続いた。
納涼祭の日が近づいてくるにつれ、私の仕事も落ち着いていった。
つい先日まで多忙を極めていたことが嘘のように、8月の終わりには2連休が確保できた。
久しぶりの連休、久しぶりに瀬川くんに会える…。
私は期待に胸を躍らせ、彼に会いに行くため電車に乗っている。
もう何度目だろうか。
慣れたその駅に到着すると、送迎レーンで瀬川くんが片手を挙げた。
「ごめん、1本逃しちゃって」
「いや、全然。それより最近すっげえ忙しかっただろ?お疲れさん」
自然な手付きで私から荷物を受け取り、後部座席に積んでくれる。
それからすぐに助手席のドアをあけ、乗るように促された。
「なんだかお姫様みたい(笑)」
「ふふっ、お疲れの姫を癒さないとな」
瀬川くんも乗り込むと、車は発進した。
「腹減ってる?」
真っ赤な夕陽が私たちを見つめている。
「うん、すいてきた!今日ごはん、どうしよっか?」
「最近さ、ちょっと小洒落たイタリアン?の店が出来たんだよ。行ってみる?」
「えぇ、そうなんだぁ!うん。行ってみたい!」