不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第30章 夏の終わりに…
10メートルはあろうかという長い竹の両脇に、中学生や子供たちがぞくぞくと集まる。
流し口で瀬川くんが「いくぞ~~!」と声をかけると、ワアワアと盛り上がった。
私はその楽しそうな瞬間を写真におさめていた。
「ふふっ…」
騒ぐ生徒たちにつられて笑うと、私のすぐうしろで校長先生も笑っていた。
「毎年ね、これをやると…夏が終わるなあと感じます。子供たち、可愛いでしょう?ふふふ…」
「はい、とっても」
校長先生の眼差しは、子供たちやこの地域への愛情に満ちているようだった。
太鼓の音が鳴り響き、櫓のまわりをぐるりと人々が囲む。
瀬川くんはスーパーボールすくいの店番だったので、私もそばでイスに座って盆踊りを眺めていた。
生徒たちとじゃれ合いながら笑う、いつもと少しだけ違った瀬川くんは新鮮だ。
あっという間に夜も更け、片付けが終わる頃には夜8時を過ぎていた。
何気なく携帯を確認すると、アンナからの着信が3件も入っていた。
なにかあったのかな…。
心配になり電話をかけ直すと、すぐにアンナが出た。
「アンナ?ごめんね、気づかなくって…なんかあったの?」
「ミライ…」
「…泣いてるの?」
「…」
受話器の向こうから、アンナが鼻をすする音が響く。
「ね、どうしたの。なにがあったの?大丈夫?」
「やっぱり……」
こちらの様子に気付いて瀬川くんが近づいてくる。
”どうした?”と目で合図され、私は口をパクパクさせ”アンナから”と伝えた。
「やっぱり…何??」
「あいつ…彼ね…やっぱりだめだった。別れたぁ…ッうぇえッ…」
ぶっきらぼうに言葉を吐くアンナは、堰を切ったように泣き出した。
「だめって…浮気してたって事なの?いや、とにかく…ッ、アンナ、ちょっとまってて」
私は受話器を手で押さえ、瀬川くんに早口で事情を説明した。