不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第5章 恋人ではない
彼は工具ボックスから電動ドリルを取り出すと早速作業を始めた。
程なくしてチャイムが鳴り、玄関先にぞくぞくと荷物が運ばれてくる。
私はとりあえずそれらを奥に押しやり、最後に運ばれてきた洗濯機の置き場を案内した。
「大丈夫か?」と奥から出てきた瀬川くんに、「洗濯機の取り付けはどうします?」と配達員が投げかけた。
「あぁ、そのままで良いですよ」
彼が答えると、配達員は帰っていった。
「あとで洗濯機取り付けるから、ちょっと待っててな」
そう言って瀬川くんはまた棚の組み立てへ向かった。
私は荷解きを進め、8つあった段ボールが残り3つになったところで、「OK」と声が聞こえた。
振り返ると見事に棚が完成していて、瀬川くんは工具を片付けている。
「すごい~!出来た!ありがとぅうう!」
私がパタパタとはしゃぐと、彼は微笑んだ。
「さ、洗濯機取り付けるか。そういえばお前…布団とか無いじゃん。買いに行く?」
「あっ…そうだった」
すっかり忘れていた。フミと暮らしていた家では、ここ半年以上も仕事部屋の床でブランケットに包まって眠っていたんだ。
あとから買い物に行く約束をして、瀬川くんは洗濯機を取り付けに行った。
私は残りの段ボールをひろげ、とりあえず仕事が出来るスペースを作った。
お昼も近づき、私たちは昼食がてら買い物に出掛けた。
「ごめんね、せっかくの週末に引越しに付き合わせちゃって…」
「謝られるとつらい(笑)これもデートだろ?」
瀬川くんはそう言って私の髪をくしゃっと撫でた。
引越し蕎麦という名目でお蕎麦を食べ、家具屋やホームセンターで一通りの買い物を済ませた。
再びアパートに戻ったときには時刻は15時頃で、ひとまず荷物を全て部屋に運ぶと
「今夜はどうする?ガス明日なら風呂入れないし…仕方なく今日も俺と風呂入る?(笑)」
と瀬川くんがいたずらに笑う。
「あははっ。…もしよろしければ、是非(笑)」