不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第8章 なにかが変わる時
「ミノルといて、たとえば子供がどっちも寝ちゃったりするじゃない?そうすると私たちだけの時間になるわけで」
「そうだね」
「そういうとき、何ていうか…。…ね、引かない?」
「今さらなによぉ(笑)引くわけないでしょ」
「う、うん…。そういうときね、なんだか…昔ミノルと付き合ってた時のこと思いだして、もう一回ミノルとそういう関係になったら…って想像しちゃって、しんどいの」
奈美は彼女なりにかなり遠回しに言ったように思うが、私にはすぐにその意味が分かった。
「したくなっちゃう、ってことね」
「んもう、ミライ!」
奈美はそっと私の肩を押し、もじもじしている。
「あれ、違った?」
「うーん…」
「違わないでしょう(笑)相手は私なんだから、もう開き直ってなんでも言ってよ」
「…うん。……そうなの!!」
少しぶっきらぼうに言葉を吐き出すと、彼女はティーカップに入った紅茶を一気に飲み干した。
「ごめん奈美。ほんとに言っちゃ悪いんだけど…」
「なあに?」
「すっごい可愛い」
「…っ!!なんでよぉ、ミライ、からかってるでしょお~~!!」
顔を赤くしてバシバシと私の背中を叩く奈美は、なんだかとても可愛かったのだ。
「まぁまぁ、落ち着いて(笑)ミノルくんの方はどうなの?相変わらず優しくしてくれる?」
「うん。むしろどんどん優しくなってるような感じ…。でも変なことはしないよ?帰る時間とかも気にしてくれるし」
「ほほう…」
「車の中で子供が寝ちゃって、私もつい寝ちゃってね。ミノルがひざ掛けをかけてくれて、ぼんやり目が覚めたの。もう…ひざ掛けついでに、…キ、キスしてくれないかなって思っちゃった、この間…」
「わお…!」
「ねぇ、こんなのって駄目だよね?!やっぱりもう会わないほうがいいかな…?」
「それ、私に聞く?」
「あ、そうだった」
「でもさ、…したくなっちゃう、ってだけなら駄目なことでもないんじゃない?ケイと3人で話したよね!ときめくのは自由だーって」
「うん、話したね。浮気…ではないもんね、思うだけなら」
雨はより一層強くなり、アップルの店内にもザァーーッと音が聞こえ始めた。