不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第9章 悩める恋する30歳
お昼を過ぎると奈美から着信が入る。
「もしもし、ミライ?」
「うん、ミノルくんどうだった?」
「大丈夫だって…」
「なんでそんなにテンション低いのよ(笑)良かった、楽しみだね!」
「緊張しちゃって…だってミノルとお酒飲むの、同窓会
以来だし…」
「もしかして、”何着ていこう?”とか思ってる?」
「…っ!どうして分かったのお(笑)」
「あははっ、私も同窓会で瀬川くんに会えるって分かった時、実はすごい悩んだの。結局、すんごいシンプルな服装だったけどね(笑)」
「この歳で、なに着ていこうなんてハシャげないじゃない?だから…」
「それ、私もそのとき思った。悩めるアラサーだね」
私はおどけて笑う。
「それで、この際だから聞いちゃうけど…どんなのが良いかな?」
「んん、奈美は細身で背も高いから、私はスキニーパンツとかが好きだけど。でもこれって一応デート?だしなぁ…」
奈美は、「そんなんじゃないけどぉ…」と照れている。
私はしばらくうーん、うーんと考えたあと、思いついた。
「あっ、ブラウスに…ハイウエストのロングスカートとかどう?バラ組の旅行の時、一度だけ着てきたじゃない。あれすごく似合ってたし可愛いよ!」
「えぇ…一応あるにはあるけど、入るかなぁ…」
「なーに言ってるの?あの頃から全然体型変わってないじゃない。大丈夫だよ」
「そうかなぁ…うん、あとで試してみる」
私は一度だけ見たその服装の奈美を思い返した。
スラッとしたスタイルが強調され、とても素敵だった。
「これからお母さんにね、カットとカラーしてもらうの」
「おぉ、いいねぇ!私もそろそろ行かなきゃだ~」
「それで、飲みに行くために髪切って、気合い入ってるって思われたくないの。だからミライ、当日会っても騒がないでよぉ(笑)」
同窓会の前に私も同じようなことばかり考えていたな…と微笑ましくなる。
「ふふっ、分かるなぁ。大丈夫、言わない!」
電話を終えると、私はネットで注文した新しいピアスを試しに付けた。
瀬川くんが買ってくれたピンクゴールドのネックレスと合うような色合いの、小ぶりに揺れるシンプルなものだ。
もうすぐやってくる週末に胸を踊らせ、眠りについた。