不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第10章 同級生
腕を組んでいた瀬川くんにもたれかかる。
「どうした?」
「ううん。なんか…まだ1年も経ってないのに、同窓会から随分経った感じがする」
「ん…。色々あったからな…でも、あのとき会えてなかったら今の状況は全く違うだろうな」
離婚したことが正しかったのかどうか、私も彼もまだ大きな声で言い切れるほど時間は経っていなかった。
これで良かったのだろうかと、振り返ってしまう瞬間がないと言えば嘘になる。
瀬川くんも、そうなんだろうか…。
私はつい、気持ちがしゅんとしてしまう。
「何考えてる?」
「えっ…」
「なんか良からぬこと考えてないよな?(笑)」
「か、考えてないよぉ?うん…大丈夫」
瀬川くんはその場に立ち止まると私と向き合い、やわらかい表情で私を見つめる。
それから強く抱きしめ、私を落ち着けるように優しく背中をポンポンと数回叩いた。
「…俺はね。今とこれからを生きたい。お前との思い出だけを持ってね」
「ん…」
「お前は?」
「私…も…過去は…振り返りたくない…」
「うん」
「瀬川くんとの思い出、もっと…沢山つくりたい」
「俺もだよ」
私たちは人目も気にせず抱きしめ合い、年甲斐もなく気持ちを伝え合う。
小さい子供をなだめるように私の髪を撫でると、再び手をつないで歩き出した。
「前にも話したけど、平野には本当に感謝だよな(笑)」
「ふふっ、ほんと。キューピットだね」
「あの顔でキューピットな(笑)」
ケラケラ笑いながら歩みを進めると、程なくしてカジュアルバーが見えてきた。
店の前には奈美が立っていて、私たちには気付いていないようだった。
私は瀬川くんに合図するとコソコソと近づき、「ワッ!!」と奈美を驚かせた。
「わああぁっ、びっ…くりしたぁ…!!もう、やめてよミライぃ~~」
相手が私と分かると奈美は笑い、「久しぶりだね」と瀬川くんと挨拶を交わす。
「ミノルね、30分くらい遅れそうだから先に飲んでてって」
「そうなんだ。それじゃ、入ろうか?」
「そうだな」
3人で店に入ると、あの同窓会から変わっていない店内の風景に何だか懐かしくなる。