不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第10章 同級生
隅のテーブル席に案内され、向かっている途中で私は耐えきれず「奈美、髪型すごくいい!可愛い。それに、ロングスカートばっちりじゃん」と小声で囁いた。
「ほんと?」と奈美は素直に喜んだ。
4人がけのテーブル席に着くと、どこに座るか…で奈美の動きが止まる。
「お前ら隣に座る?」
気を使っている瀬川くんに「いや…えぇっと」と私が答える。
「えっ、私ミノルの隣…?」
「一緒に飲むの久しぶりなら…ねぇ?」
と瀬川くんに投げかけると、彼は察したようで
「あ、あぁ、そうだよな。俺こいつの隣がいいし、嫌かもしれないけど仕方なくミノルの隣に座ってやって(笑)」
と立ち回ってくれた。
奈美は自ら積極的にいくタイプではないので、その展開に不満はないようだった。
飲み物を注文し、ひとまず3人で乾杯する。
「ストレートに言っちゃうけど…正式なお付き合い、おめでとう(笑)」
奈美がそう言うと、私が答えるよりも先に「どうも(笑)」と瀬川くんが笑った。
温泉旅行でアンナが酔っ払っていた話なんかをして、奈美はクスクスと楽しんでいるように見えたが、お酒はいつもよりも進んでいた。
「そういえばミノル、離婚したって聞いたけど。あいつ仕事とか大丈夫なのかな」
ミノルくんは自動車ディーラーの整備士として働いていて、時には帰りがかなり遅くなる事もあるようだった。
「うん…大変みたいだけど、実家に帰って今は両親も一緒に子供見てくれてるから。アパートと実家を行ったり来たりしてた今までよりは、はるかに楽だって言ってたけど」
奈美は少しだけ頬を赤らめながら言った。
「奈美、スピード早くない?大丈夫?」
「あっ、うん。大丈夫…」
「そういえば中学の時さ、ミノルくんと瀬川くん、背の高さをいつも競ってたじゃん?…---」
奈美の気を紛らわそうと話題を変えた。
アハハ!と奈美が笑ったとき、お店の扉が開き、目をやるとミノルくんが私たちを探していた。
瀬川くんが片手を上げるとこちらに気づき、ここまで急いでやって来たように見える顔つきで向かってきた。
奈美はドギマギした様子で待っていた。
「ごめん、お待たせ!飲んでるか~?」
ミノルくんは明るい口調で言いながら、当たり前のように奈美の隣に腰掛けた。