不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第11章 キケンな夜
「…なんか用?」
背の高いミノルくんに低い声で言われると、男は
「あっ!…彼氏さんですか?うわぁ…せ、背が高いっすね…」
とたじろいだ。
ミノルくんは「だったら何なの?…お前、知り合い?」と奈美に問いかけた。
「ううん、知らない…いま急に…」
ミノルくんがギロリと男を見ると、そそくさと立ち去っていった。
見たことがないミノルくんの少し怒ったような態度に緊張しながらも、「なにあれ、失礼しちゃう!」と言うと、奈美は「あぁ、びっくりした…」と胸を押さえた。
そしてミノルくんが椅子に腰掛ける時、奈美の背中をそっと触り、私は奈美がときめく瞬間を見てしまった。
「なあ、今どきのナンパって最初に身長聞くの?(笑)」
ミノルくんは元通りのテンションで瀬川くんに言った。
「知らねえけど、身長ってワードには今俺らピリピリしてるからな(笑)」
と瀬川くんも笑った。
最後の1杯を飲み終える頃、
「2人は今日、時間大丈夫なの?」
と聞くと、奈美は
「私は…もうちょっと大丈夫だけど…」
と、ミノルくんの顔色を気にするように控えめに言った。
ミノルくんは優しく微笑み、「俺も大丈夫だよ」と答えた。
その視線は、瀬川くんが私を見るときのそれによく似ていた。
「じゃあ…移動する?」
瀬川くんの提案に「いいね!次いこう」とミノルくんも乗り気だった。
私や奈美の発言をほとんど無視する形で2人がサクッとお会計を済ませ、店を出ながら私たちはお礼を言った。
週末の夜の駅前は賑わっていて、大きな看板をぶら下げた客引きのお兄さんに声をかけられる。
「おっ!Wデートっすか?いいっすね!俺一緒に行く子いなくて…俺のかわりに4名様でウチどうっすか?(笑)」
なかなかやり手な声掛けに、私たちは笑った。
「どういう店なの?」
ミノルくんが聞く。
「ハワイアンなバーです!カウンターは立ち飲みになっちゃうんですけど、ソファもテーブルも沢山あるんで!自由にどこで飲んでもOKっす!」
「なにそれ、クラブみたいじゃん」
「そうっすね!ただ、うるさい音楽はかかってないんで…お兄さんたちでも楽しめるはずです!!」
「おい、今おっさん扱いしたろ(笑)」