不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第11章 キケンな夜
客引きとミノルくんのやり取りにクスクス笑いながら、結局そのお兄さんの案内するお店へ行くことにした。
店内へ入ると、ところどころが淡いカラフルな照明で照らされ、少々トロピカルな内装だ。
「す、すごいね…」
私にくっつくようにしている奈美が言う。
「ね。こんなお店が出来てたんだねぇ」
広いフロアの壁際にはたくさんのソファやテーブルが並び、中央には観賞用のプールが設置されている。
カウンターでドリンクを頼み、ひとまずそこで立ったまま4人で乾杯した。
私と奈美は、せっかくだからと男2人にすすめられ、膨らんだ大きなグラスに入ったハワイアンなお酒を飲んでいた。
「それ、どう?」
「ん、美味しい!パインの味がする」
「こっちはベリー系みたい、ほら」
私たちがお酒を交換してきゃぴきゃぴ言っている姿を見て、瀬川くんとミノルくんは柔らかく微笑んでいた。
「でもさ、これ…」
「うん(笑)」
「「酔うね」」
2人で笑うと、「そちらはテキーラが入ったカクテルです。ごゆっくり楽しんでくださいね」とバーテンダーが言った。
テキーラと言えばアンナ、と同じことを思う私たちはププッと吹き出した。
「転んだらいけないから、どっか座ろうか」
私が言うと、「それがいいよ。先行ってて」と瀬川くんが言った。
私たちは赤いふわふわなソファを選んで座ると、この現実味のない空間にはしゃいだ。
男2人はカウンターで何やら話し込んでいる。
「男同士の話かなぁ(笑)」
奈美はほんわかと酔っ払っている口調で言った。
テキーラのせいで私も気持ちよくなり、奈美に寄り掛かる。
「奈美」
「んー?」
「さっきの店でさ…」
「うん…?」
「ミノルくんにときめいてたでしょ(笑)」
「ふふっ、もう~やめてよ、恥ずかしい」
「だってたまたま、見ちゃったんだもーん」
「なんかおかしな気分だよ。開放的っていうか…お酒のせいかな」
頬を赤らめて言う奈美の目は、悲しみとは違う色に潤んでいた。
「たまにはパーッと飲んで、楽しまなくちゃね」
「ありがとう…今日、ミノルとこうして飲んで話せて、本当に良かった。すっごい楽しい!」
奈美は珍しくピンと張った声を出し、さらにカクテルを飲み進める。