不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第13章 叶わなかったキス
朝起きると私にはきちんとタオルケットが掛けられ、隣には瀬川くんが眠っていた。
外は曇り空なのか、時刻は8時近いのに朝日が差し込んでいない。
「…んっ…」
ズキンと頭痛が遅い、思わず唸ると、瀬川くんがうっすらと目を開けた。
「おはよ」
「おはよう」
「頭痛いの?」
「うん、少し…」
彼は一息つくとサッと起き上がり、ペットボトルの水を持ってきてくれた。
「ありがとぅぅ…」
昨夜の奈美たちの事が気になり携帯を確認するが、連絡は入っていなかった。
頭痛が落ち着くまで、しばらく2人でまったりと過ごした。
「ふふ、なんか新鮮」
「ん?」
「瀬川くんと、こうして時間とか気にしないでゴロゴロしてるなんて」
「そういえば初めてだな。今日は宅配でも取って、1日中こうしてるか?(笑)」
「うん、それもいいね!雨、降りそうだし…」
それからファーストフード店の宅配を注文し、私はパソコンを立ち上げた。
「仕事?」
「ううん、あじさい見に行く前に…いろいろ調べてみようかなって」
「お、そうだな」
私達は梅雨にあじさいを見に行く計画のために、ネットサーフィンを始めた。
「あ、ここ。このお寺が人気みたいなの」
瀬川くんは画面を覗き込んだあと、携帯のマップで場所を確認している。
「また美味いもん食えるな(笑)」
「ふふ、やっぱりしらす丼かな?ひものも有名だよねえ」
お昼頃、私の携帯が鳴った。
「もしもし、奈美?昨日大丈夫だった?」
「ミライ~、ごめんね。私すごい酔ってたよね…?!」
「大丈夫だよ。それよりあれからちゃんと帰れた?」
「う、うん…」
「奈美?」
「今、瀬川くんと一緒?」
「うん、そうだけど…」
「そっか…」
「なあに、どうしたの?」
「だめだ、言えない。近いうち会える?」
「もちろんそりゃあ…明日にでも私は大丈夫だけど」
「分かった!ありがとう…明日、ランチいこう」
暗くも明るくもない、なんとも読めないテンションの奈美と電話を終えると瀬川くんは心配そうに見ていた。
「ミノルと何かあったのか?」
「いや、なにも言ってくれなくて。まさか、無いとは思うけど…」
「ない…だろうな、分からんけど…」