不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第13章 叶わなかったキス
「う、うん…」
「私なんであんなこと言っちゃったんだろう。ねぇ、駄目だよね…」
奈美は猛烈に後悔しているようだった。
「それでミノルくんは、なんて…?」
「最初は冗談だと思ったみたいで、笑いながら”だめ、帰れ”って言ってた」
「帰ったの?」
「…ううん…あんまり私が帰らないから、そのまま2人で降りてその公園で少し歩いて…」
時折なにかを鮮明に思いだした様子でため息をつく彼女の、次の言葉が気になってじれったい。
しかし私は急かさず待った。
それからしばらくして奈美は意を決したのか、一連の出来事を一思いに話した。
「ベンチに座ってミノルが私をなだめてね。私…ミノルの肩に寄りかかって。背中をさすってくれるんだけどそれ以上はなくって」
「うん」
「それで私、キスしたいって言っちゃったの」
「えぇえっ!!!?---……う、うん、それで?」
私はまさか奈美がそんなことを言うなんて、世界がひっくり返るほどビックリした。
それほど奈美はこれまで真面目で誠実な女の子だったからだ。
「でも、ミノルはね…駄目だって。それで結局なにもしてないの」
「そ、そう…」
「なんであんなこと…。はぁっ…」
「お酒も入ってたから。そんなに落ち込まないで」
「ん…でもここからが更に問題なんだけど…ミノル、私を抱きしめたの。それで、なんて言ったと思う?」
私は瀬川くんに聞いた内容が脳裏に走ったが、ひとまず「なんて?」と聞いた。
「私のこと大事だから…今の状態でキスとかそういうのしたくないって…」
「…つまり?」
「私が困ったときは守るし、たとえば離婚とかしたら…そのときはね…」
「うん…?」
「け、結婚したいって…」
それは、昨夜私が瀬川くんに聞いた内容そのものだった。
「なるほど…」
「ミライ、驚かないの?私びっくりしすぎて…気を失いそうだったよ」
「奈美、ごめん…私、昨日瀬川くんからね、少し聞いてたの。でも今は言わないほうがって…」
「そうなの?!言ってよぉ…。でもまぁ、昨日の今日だからね…」
「ごめんね…」
「ううん…、なんて聞いたの?」