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不純異性交際(下) ―それぞれの未来―

第13章 叶わなかったキス


「えっとね…今奈美が言ったのとほぼ同じ。ミノルくんは奈美の結婚生活がうまくいかなかったら、俺が結婚したいって言ってたみたい。だけど、幸せならわざわざ壊すことはしたくないって。やましい関係にはなりたくないって…」



受話器の向こうで奈美はしばらく黙っていた。


「結婚、って…」


「うん、私も驚いたよ。いろいろ飛び越えてるけど、でもそれは奈美と付き合ってたミノルくんだからこそなのかもしれないね」


「私それ聞いて、自分が余計に恥ずかしくなった。軽はずみにキスしたいだなんて…」


「軽はずみだったの?」


「………。分からない…」


「うん……」


「ねえミライ、お願い。なんか言って、バシッと…」



「え、なんかって…」


「私このままじゃ狂いそうなの。こんなこと…」


人生上、こんなことは起こるはずではなかった。

おそらく彼女はそう言いたいのだ。


「んんと…まず、人生なにが起こるかホントに分かんないなって、私自身離婚して、すごくそう思った」


「うん。…?」



次の言葉を促すような彼女の返答に戸惑ってしまう。


「私は…子供いないし、分からないことのほうが多いよ。瀬川くんと不倫関係だったのは事実だし…えらそうに言えない…」


「いいの。お願い!私どうしたらいいか分からないの…情けないけど…」



「…うーん……。大事なのは奈美の気持ちと、恭ちゃんの未来、じゃない?まぁあとは、旦那さんの家庭に対する向き合い方も問題か…」


「なにから考えたら良いのか…」


「まず奈美は、旦那さんとこの先…生活していける?私は…まずはそこから考えたかも…」


「今までもそうしてきたから、出来ないとは言い切れない。不満はあるけど…」


「出来ることなら関係修復して、家族でいたい…?」



「そりゃあ、ね…。でも今はミノルの存在が大きくって、冷静になれない。もう30過ぎて、一児の母なのに。何してるんだろう…」


「まずは旦那さんに不満を話してみたらどうかな?」


「そうだよね、ひとつずつ解決していかないと…」



心なしか少しだけ冷静になったようにも感じる奈美の口調に、ひとまずホッとする。



「それで昨日は結局帰ったんだ?」


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