不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第16章 バラ組が来た
「う、うん…まぁ、普通かな」
「普通、ね」
「ん…」
少し俯くアンナに、さらに声をかけようか一瞬躊躇した。
「なんかあった?」
「いや、ないよぉ…。ただね、やっぱ気になるの」
彼が若くてモテる事や、浮気が心配であるという事だろう。
「やっぱり…心配?」
「うん…。ねぇ、安心できない交際って、どうなんだろう。最近そればかり考えちゃう」
「若いうちはそれが刺激になるかもしれないけど、…今だったら、私は嫌かな」
「やっぱりそうでしょう?私もね、彼のことは好きだけど…なんか、違うんだよね」
それから少し話して、私はシャワーを浴びた。
化粧をしながら再びアンナに問いかけた。
「でも、別れるとかではないんでしょ?」
「まぁ、別れ話は全然してないけど。でも一緒にいても、気持ちが入らないというか」
「うーん…」
「いつも不安で、せつなくなっちゃう」
「あんまり、良くないね。安心したいよね」
「うん…ミライが言ったように、モテないおっさんと付き合うべきなのかなぁ」
半笑いでアンナが言うので私は吹き出した。
「まぁとにかく、今日を楽しもう?」
「うん…」
「ね?」
「今日、私飲み会だって言ったら、彼も飲みに行く事にしたって。信じても良いのかな」
「気持ちはわかるけど、疑ってるとメンタルがしんどいよ」
「そうだよね。うん、今日を楽しむ!!せっかくみんな集まるんだも~ん!」
「そうそう、その調子(笑)」
15時過ぎ、私たちは似たような赤いトップス姿でアップルに向かった。
---シャランッ
窓際の特等席は、まるで私たちが久しぶりに集まることを待っていたように佇んでいた。
「私たちが最初だったね」
アンナと向き合って座ると、マスターがやって来た。
「はい、いらっしゃい。おめかしして、どこに行くの?ふたりとも仲良く赤色だね」
「マスター!今日はね、バラ組が全員集まるんだよぉぉ~!それでこのあと、同級会なの。みんな、赤!だよぉ(笑)」
アンナが嬉しそうにはしゃいでいる。
「おぉ、随分久しぶりだ」
マスターも顔がほころび、嬉しそうだ。
「じゃあ、サービスしないとね」
そう言って奥へ戻っていった。