不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第17章 交差する感情
しばらくカウンターで3人並んでいたが、時折カラオケに誘われてアンナが消える。
「奈美はカラオケ、昔からあんまり好きじゃないよね」
「うん、聞いてるほうが好き」
ニコニコと微笑みながらお酒を飲む奈美は、どこか上の空にも見えた。
「奈美らしいね。私も、カラオケ大好きってわけじゃないけど…」
「バラ組でなら、楽しいよね(笑)」
「そうそう(笑)どんなメンバーかによってだいぶ楽しさ変わるよね」
話していると、アンナが座っていた席に平野がやって来た。
「楽しんでる?」
「うん!いつも幹事おつかれさま」
奈美がトイレに立つと、平野はこそこそと言った。
「俺さ、実は…」
「どうしたの?」
「彼女の旦那に、関係が…多分バレた」
「えぇッ?!」
「ちょっと、シーッ!」
「あの…ショッピングモールで会った時の、年上の彼女さん…だよね?」
「うん、そう」
「それで、どうなったの?」
「とりあえず今、彼女と連絡取ってないんだ。彼女も旦那も離婚はする気ないっぽい。このまま連絡来なかったりして…」
平野は切ない表情でグラスを傾けた。
「…でもま、夫と幸せに暮らせるならそのほうが彼女にとっては良いだろうしね。…あぁ、つらっ(笑)」
平野がどこか自虐的に笑うと、カラオケを終えたアンナが戻ってきた。
「あっ!平野ぉ~、私の席~!」
「アハハ、ごめんごめん。温めといたんだよ(笑)」
「なにそれぇ。ね、平野もなんか歌ってよ!」
そうしてアンナと平野はギャーギャーとテーブル席へ割り込んでいった。
不倫が、バレた…。
その時、旦那さんはどんな反応をしたんだろう。
そして離婚する気がないという事は、これからも夫婦として生きていく…-?
「ミライ?聞いてる?」
いつの間にか奈美がトイレから戻っていた。
「あっ!!?ごめん、ぼーっとしてた!どうしたの?」
「だからね、ミノルから着信入ってたの…」
「えっ。それで、掛け直した?」
「まだ…」
「どうして?なんかあったのかもしれないし、かけてあげたら?」