不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第17章 交差する感情
「う、うーん…」
「今日飲み会って知ってるはずだけど、どうしたんだろうね」
「んー…やっぱり掛け直してくるね」
心がざわついている様子で、奈美は一旦店の外へ出ていった。
「あのさ」
突然、隣の椅子にコウヘイくんが腰掛けた。
「わ、びっくりした…」
「アハハ。…俺、ミライちゃんにさぁ」
「うん?」
「謝りたくて。ずっと」
あの時の事だろうか。
それ以外、思いつかなかった。
「えっと…」
「酔ってたのもあるけど、調子乗ってたというか。いけない事した。本当にごめん…」
珍しくシリアスな表情で謝るコウヘイくんは、言い終えてからも私を見つめている。
「ううん…もういいの。忘れよう?」
「ん…もう、あんなに強引な事しないから!乾杯してくれる?」
「うん」
正直あのときはコウヘイくんの腕の力や言動が怖かったけれど、今は素直に許すことが出来た。
チン、とグラスをぶつけ、2人で水割りをコクリと飲み、意味もなく笑った。
これからはコウヘイくんとも、良いお友達になれるかもしれない。
そう思った瞬間、コウヘイくんは私の手を握る。
「えっ…?ちょ…っ」
「仲直りの握手だよ!いいでしょ?」
彼は握った手を少し揺らし、そしてそのまま親指で私の手の甲をすりすりと撫でた。
「ちょっと、…もう、いいでしょ?」
私は他の人に見られたら嫌だと思い、手を離した。
「ミライちゃん、俺のことすげえ嫌いじゃない?」
「そういうんじゃないよ、いつも突拍子もないこと言ったりやったりするからびっくりするだけ…(笑)」
「本当?」
「うん」
「俺、まだ1ミリでも可能性ある?」
「…ほら、突然そういうこと言うでしょう(笑)」
コウヘイくんがおどけると、奈美が戻ってきた。
「ミライ、ちょっと良い?」
「どしたの?」
「…」
「あ、俺、邪魔っすか?へいへーい」
コウヘイくんがテーブル席に移動したのを確認してから奈美は言った。
「ミノルが来るって」