不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第18章 心を乱す存在
時刻はもう22時を過ぎているが、私は急に瀬川くんの声が恋しくなってしまった。
トイレに行くふりをして、こそっと店の外に出ると彼に電話をかけた。
「もしもし」
「あ、瀬川くん。ごめんね、メッセージ今見たの」
「終わったの?」
「いや…それが…--」
私はミノルくんと奈美の事情を説明した。
「それで、まだ飲んでるって事か」
「うん。ミノルくんが来たら、私はアンナとタクシーで帰るつもり」
「ん…分かった。心配だし、あとでまた電話してもいいか?」
「うん、もちろん…でもごめんね、瀬川くんまで付き合わせちゃって。もう遅いのに」
「いや、俺は全然。それじゃ、あとで」
電話を終えて席に戻っても、奈美にミノルくんからの連絡は来ていないようだった。
「ね、そろそろ23時も近いし…あんまり遅くなると奈美もまずいよね」
「そ、そうだね…ミライも早く帰りたいよね?ごめんね…」
「ううん、大丈夫だよ。とりあえず23時まで待って、来なければ今日は…ね?」
「うん…そしたら今日ミノルと会うのは諦める」
私は瀬川くんに、[23時までミノルくんが来なかったら、解散する事にしたよ]とメッセージを送った。
「ミライちゃん、もっと話そうよ」
私の携帯の画面を覗き込むようにコウヘイくんが言う。
「良いけど、変なこと言い出さないでよ(笑)」
「ふふっ。…ねえ」
「なあに」
「瀬川は優しい?」
「…うん、優しいよ?とっても」
「ふぅん…」
わざとなのか偶然なのか、また太もも同士が当たっているのが気になってしまう。
アンナと平野がギャーギャーと盛り上がり、なにかの弾みでグラスがガシャン!と倒れ、私と奈美の膝が濡れた。
「あぁーっ!もう、平野のせいで2人が濡れちゃったじゃん!」
「えぇ~!アンナちゃんが押すからぁ…ごめんね2人とも、大丈夫?あの、おしぼりくださーい!」
すぐに店の人が乾いたタオルを持ってきてくれた。
奈美のほうが激しく濡れていたので私は奈美を優先して拭いていると、隣からコウヘイくんが「ミライちゃんも拭かないと、風邪ひくよ」と言っておしぼりで私の膝を拭った。