不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第18章 心を乱す存在
「だ…大丈夫だよっ、いいって」
すぅ…っとももをなぞるおしぼりの感触で、おかしな寒気が走る。
「乾いたかな?」
そう言って素手で私のストッキングに触れようとするので、とっさに「ちょっと!大丈夫だってばぁ」と少し強い口調で言ってしまった。
びっくりした顔で私を見るコウヘイくんが少し不憫になり、「もう、乾いたよ。ありがとう」となるべく優しく言い直した。
彼は私にだけ聞こえるように、「へこむなぁ…」とつぶやいた。
「だって…コウヘイくん、ちょいちょい…いやらしいんだよね。言い方悪いけど…(笑)」
私は冗談のつもりで言ったのに、コウヘイくんは私を至近距離から見つめ
「好きな子には、誰だってそうなるっしょ。男なんだから」
と言った。
私がなにか言う前に、
「おい、また近い!コウヘイ~お前まじで」
指差しながら平野が注意した。
今のコウヘイくんの言葉は聞こえていなかったと信じたいが、綾香ちゃんはせつなそうにこちらを見ていた。
間もなく23時になる頃、私の携帯が鳴った。
瀬川くんからだ。
「ちょっと電話っ…」
外に出て通話ボタンを押した瞬間、道路の向こう側に大きな人影がふたつあり、彼らは私を見ているようだった。
「もしも…し」
よく見るとそこには瀬川くんの姿があり、受話器を耳に当ててこちらへ微笑みかけていた。
「えぇっ?!どうしてっ…?来てくれたの?」
「うん。迎えに来た」
顔を見ながら電話越しに言葉を交わすと、2人はこちらへ歩いてきた。
隣りにいるのは…ミノルくんだった。
「あっ…ミノルくんだったの。奈美、待ってるよ」
「俺がここに着いたら、ちょうどミノルも来てさ、たった今」
「そうだったんだ!」
目の前に大好きな瀬川くんがいる。
なんだか心細かった私の心が一瞬で潤う。
「ミライちゃんごめんな、あいつと一緒に待っててくれたって聞いたよ」
「ううん、大丈夫。それより奈美が心配してたよ。2人ともここで待ってる?中、入る?」
「挨拶だけしてくか…」
結局みんなでひとまず店内へ入ることにした。