不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第20章 瀬川くんの憤り
「コウヘイじゃなくても、な。お前は自由なんだから。…ごめん、一瞬ちょっとイラッとしたのは事実だけど(笑)もう気にすんな」
「確かに私も瀬川くんも自由…かもしれないけど、心変わりなんて。言ってほしくないよ…」
「…」
「私は…瀬川くんが、他の誰かに心変わりしても仕方ないなんて…思えない…っ」
「…俺が心の底からそんなこと思ってると思うか?俺がお前にどれだけ惚れてるか、大事にしてるか、全く伝わってなかった?」
「…ううん。伝わってる…」
「な。カッコつけさせてよ。本当の気持ちはハッキリ言えなかったりするもんだよ」
瀬川くんは私の頭を優しくポンポンと叩いた。
嫌な思いをしたのは彼のはずなのに、いつの間にか私がフォローされる形になった。
「無視も出来ないし、どうしようって思ったけどとりあえず返事を送ったんだよな?」
「…うん」
「じゃあそれでいいじゃん。同級生だしな。ハイ、もうこの話おわりにしよ。俺もちょっと感じ悪くしてごめんな」
場所を移動して、私にしっかり布団をかけると瀬川くんは部屋の電気を消した。
そっと隣に寝転ぶ彼に、私はたまらずしがみついた。
「瀬川くん…」
「ん?」
「私…本当に瀬川くんのことが好き」
「どうした?突然(笑)嬉しいけど」
「ホントにホントに、瀬川くんだけが好きなの…っ」
「…うん、俺も好きだよ」
「コウヘイくんは単なる同級生で、2人きりで会うなんてことも絶対にない。他の男の人と、やましい事したりしない。だから…」
「…だから?」
「心変わりしても仕方ないなんて、…言わないで…っ」
私はとうとう涙が溢れてしまった。
瀬川くんはせつなげに微笑むと、私を強く優しく抱き締めた。
「悪かった。心変わりしてほしくない…当たり前だろ」
「うぅ…うぇぇん…」
「好きな子、泣かせちゃった」
彼はティッシュで私の顔を拭い、私をあやすように言った。
「再来週のあじさい旅行、楽しみだな」