不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第21章 二度目の学校訪問
翌朝目が覚めると、何だか頭が重い。
「んぅ…」
昨日、久しぶりに泣いたからかもしれない。
上半身を起こすと瀬川くんも目を覚ました。
「おはよ。どうした?」
「おはよぅ…なんか頭が重くて」
「大丈夫か?」
「うん、とりあえず支度しなきゃ」
身支度を済ませて朝食を用意すると、部屋にはコーヒーとトーストの良い香りが広がった。
コンソメとミックスベジタブルでぱぱっと作ったスープも添えると、瀬川くんが感心したように「おぉ、豪華」とつぶやく。
「パン焼いただけだよぉ(笑)」
「俺、焼いてない食パンかじりながら仕事行くこと多いから(笑)」
「ふふっ」
束の間の朝の時間をなごやかに過ごし、学校へと出発した。
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木々は緑で溢れ、冬に訪れた時とは全くと言っていいほど雰囲気の違うその景観に私は声を上げた。
「すごい。やっぱり良いところだね」
「冬はガランとしてるけど、春夏はこんな感じ。田舎だろ(笑)もうすぐセミがうるさくなる」
車を停め、職員室へ向かうと出入り口の前では前回と同じように校長先生が待っていた。
「おはようございます、ミライさん。遠いところどうもありがとうございます」
「いいえ、また来られて嬉しいです」
「ふふふ、そうですか。いつでも来てくださいよ、夏には納涼祭もやるんです。毎年ね」
「それは是非来てみたいです!」
「流しそうめんをするんですよ」
職員室へ入ると、何人もの先生たちがこちらに視線をやった。
「おはようございます、こちらミライさん。前回のPRイベントでもデザインを担当して下さった…--」
校長先生が私を紹介してくれると、
「どこぞのお嬢さんが来たのかと思いましたよ(笑)」
などと先生たちはにこやかに迎えてくれた。
教師だけの朝礼が始まり、ちょっとした報告などが行われると予鈴が鳴った。
「ミライさん、せっかく朝から来てくれたので、良かったら授業を少し見ていきませんか?」
年配の女性が私に”訪問者”という名札を手渡してくれた。
どうやらこの女性は教頭先生のようだ。
白髪交じりの頭と華奢な体つきで、微笑むと目尻に優しいシワが寄る。