不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第2章 離別
「うん、シャワー浴びてる。ねぇ、離婚届書き終わってから同じ家で寝るのってアリ?」
「えぇ~!それ、私に聞く?!婚歴なし、彼氏なしの私に~~~?!」
いつもの明るいアンナの声を聞くと私はたちまち安心した。
「あははっ、ごめんごめん。考えちゃってさ」
「でもねミライ、私、なんで電話したと思う??明日は…土曜日なんだよぉ!もしそこで寝るの気まずかったら、私んち泊まりなよ!」
「…いいの?」
「もちろん!車も出せるし、迎えいこうか?少しなら荷物運べるし、っていうかアパートどこになったの?!」
マシンガンのように話すアンナに私は元気をもらった。
「じゃぁ…甘えちゃおうかな。ほんとにありがとう」
アンナが迎えに来てくれる事になり、持っていけそうな洋服ボックスや化粧品などをまとめた。
フミはシャワーから上がると、私がバタバタと準備している様子を無言で見ている。
「明日、家にいる?」
「…いるけど」
「業者が荷物取りに来るの。悪いけど、対応してもらえるかな?宛名貼ってある荷物、全部運んでくれるから。ついでに洗濯機もお願いしちゃって」
「…分かった」
少しの沈黙のあと、私はずっと言いたかった事をついに口にした。
「今までありがとう…。良い奥さんになれなくて、ごめんね」
「………うん」
実にあっけなかった。
どうしても欲しかったわけではないけれど、フミから「ありがとう」や「ごめんね」を聞くことは出来なかった。
でもそれも仕方ない。
今さらそれが何だと言うんだ。
私は半ば強引に自分のモヤモヤを振り切るごとく、忘れ物の確認を始めた。
しばらくしてアンナから着信が入り、ほどなくしてうちに到着した。
「ごめんねアンナ、わざわざありがとう。今荷物持ってくるから、段ボール2つだけ乗せていい?」
「当たり前じゃ~ん!でも気まずくて中入れないから、ここで待ってるね(笑)」
私は玄関から段ボールを運び、フミを探したが見つからない。おそらく寝室へ行ってしまったようだった。
どんな別れ方が普通なのか知らないが、私はそのまま鍵をしめてアパートを後にした。